ブリッジ
失ってしまった歯の両隣の健康な歯を削って、かぶせ物をして、橋をかけます。橋をかけるために、ブリッジと呼ばれている治療法です。ブリッジは固定式になりますので、取り外したり、装置を洗ったりする手間はかかりません。また、しっかりと両隣の歯に固定されているために、モノを食べる際にも、違和感なく、美味しく食べることができます。
しかし、ブリッジにも問題点がいくつかあります。まず、3本分を連続で補うことはできるのですが、5本からは支える歯に負担が大きすぎて、できないということ。次に、両隣の歯で支えますので、一番、奥の歯が抜けてしまうと支える歯がなくなってしまい、ブリッジをかけることができなくなってしまいます。さらに、ブリッジも両隣の歯で支えますので、この支えている歯に負担がかかってきます。
例えば、1本無くなってしまった歯を両隣の歯で支えるとすると、これまでは3本でやっていたことを2本でやることになります。会社で言えば、「これまで3人でやっていた仕事を1人辞めたから、2人でやってくれ」ということになります。最初のうちは頑張れるのですが、2年・3年経ったら、辞めてしまいますよね?それと同じように、支えている歯には大きな負担がかかり、状態にもよりますが10年ぐらい経つと支えている歯が辞めたくなってしまうようです(オスロ大学の調査によると、ブリッジの平均残存期間は10.5年であった)。最後に、ブリッジの場合、支える歯の周囲を削ってかぶせものをするので、健康な歯を削らなければならないというデメリットがあります。
入れ歯
入れ歯は保険が適用されるので、非常に安く、手軽に作ることができます。入れ歯の良い点は安く、手軽に、短期間に作ることができるということです。しかし、入れ歯には様々なデメリットがあります。
まず、入れ歯は人工の異物ですので、補う歯の本数が大きくなるほど、口の中に違和感が出てきます。口の中は繊細に出来ています。例えば、髪の毛1本でも、咬んで違和感があります。それが総入れ歯になると、女性の握り拳位あるものを口の中に入れるのですから、違和感がないわけないのです。
特に、入れ歯を支えるための床のような部分のある入れ歯になると、食べ物の味や熱さを感じにくくなってしまいます。
また、部分入れ歯の場合、入れ歯を入れる両サイドの歯にバネのようなものをかけます。これをかけることにより、入れ歯を固定します。しかし、支えにされた方の歯はたまったものではありません。咬む度に、上下左右に揺さぶられ、力を加えられ続けます。刺さった釘でも、長い時間をかけて上下左右に揺さぶられると、抜けてしまうのと同じように、バネをかけられてしまった歯は5年以内に抜けてしまうことが多いようです。バネをかけていた歯が抜けてしまうと、その分、部分入れ歯を大きくして、次の歯にバネをかけ、またバネをかけていた歯が抜けて、ということを繰り返し、総入れ歯に着実に近づいてしまうことになるのです。
入れ歯の場合、ブリッジのように固定式ではなく、取り外し式なので、キレイにするために毎日、手入れをしなくてはなりません。これが手間であるだけでなく、「他の人に見られると恥ずかしい」ということになります。
また、総入れ歯に近づくにつれて、食べ物がはさまる、痛いなどの理由により、咬むという重要な行為をすることが難しくなる場合があります。総入れ歯になると、たとえ咬むことができたとしても、自分の歯よりも咬む力が弱くなります。そうすると、固いものなどを食べることが難しくなってきます。
- 「大好きだった、たくわんが食べたい」
- 「おせんべいをバリバリ食べたい」
- 「大好物のステーキが噛み切れないから食べれない!」
という、歯があるときには当たり前だったことが入れ歯になってしまうと、できなくなり、美味しい物を自分の歯で好きなだけ、美味しく食べることがいかに素晴らしいことかを理解することになるのです。
現在、日本では8020運動といって、80歳のときに20本、歯を残そうという運動を厚生労働省が中心となって行っておりますが、現実は80歳になった時に平均、14〜15本しか残っていません。
それは、歯が抜けてしまった後に入れ歯を入れて、バネを支えている歯が抜けていくことを繰り返していたからです。
このように入れ歯というのは確かに、安くて、手軽に、気軽に、短期間で作成することが可能です。しかし、安く出来るということの代償として、心身に負担やストレスをかけているのです。
ある調査によると、総入れ歯の人と自分の歯が10本以上残っている人を比較した場合、総入れ歯の人の方が明らかにアルツハイマーになりやすいというラットによる実験データも出ています。歯を噛み合わせたときに脳へ伝わる刺激というのは、それほど重要なんです。
この刺激が行かなくなることで、記憶をつかさどる海馬という脳の機能と運動能力が低下していってしまうのです。つまり、きちんと咬めるということは年をとってからの生活、例えば、モノを覚える、人と話す、歩く、出かけるなどの生活に重要な機能にも重大なる影響を及ぼすのです。
インプラント
失った歯を補う3つめの方法がインプラントです。インプラントのメリットはブリッジと入れ歯の欠点がないことです。インプラントというのは、人口のチタンでできたネジのようなものを歯の根っこの代わりとして顎の骨の中に埋め込み、その上にかぶせ物を装着するというものです。
天然の歯が顎の骨の中に植わって、顎の骨で支えられているのと同じように、インプラントも顎の骨によって支えられるために、バネをかけたり、橋をかけたりする必要がありません。したがって、入れ歯やブリッジのように支えとなる歯に負担をかけることがありませんので、他の歯が抜けやすくなってしまうなどの問題が発生しません。
さらに、インプラントは顎の骨の中に植わってますので、咬んだときの感触、咬み応えが自分の歯に限りなく近い感覚になるのです。そして、脳への刺激も強くなりますので、これまで入れ歯だった方がインプラントをいれると多くの方が若々しく、活力に満ちた人生に切り替わることが多いようです。
最近は、インプラントの認知度も上がってきているようです。しかし、インプラントについては間違ったイメージもあるようです。
- 「手術が恐い」
というイメージを持つ方も多くいらっしゃいます。
確かに、「手術」と聞くと、恐いイメージを持ちます。そのお気持ちはよく分かります。
しかし、実際には親知らずを抜くような手術ですので、ケースにもよりますが、そのほとんどが小手術だと思っていただければと思います。
手術に伴う痛みも親知らずを抜いたときと同程度だと考えてください。
ですので、当院では全身麻酔ではなく、歯を抜くのと同じように局部麻酔をして、だいたい1時間~2時間で手術は終わりますし、手術後の腫れについても、2~3日経てば治っています。自分の悩みを抱えたまま生きて行くのと、少しの間、手術の恐怖と戦うのと、どちらが良いでしょうか?その手術の恐怖に勝った時に手に入る世界はどのような世界でしょうか?
- 「インプラントは高い」
インプラントについてこのように考える方もいらっしゃいます。
確かに、保険で作ることが出来る入れ歯に比べれば高いです。
インプラントは1本30万円ぐらいします。
しかし、先ほども申し上げたように、保険で作る入れ歯は当面の機能は回復しても、長期的なお口の健康にダメージを与えているのです。
また、「歯はたくさんあるから、1本ぐらいなくても良いでしょ」と思う方もいらっしゃるようです。
これは大いなる間違いです。
指にも1本1本、役割があるように、歯にも1本1本、役割があるのです。
例えば、下顎の前から6番目の歯が抜けてしまって、そのまま放っておくと、どのようなことが起こるでしょうか?
次のようなことが起こる可能性が高いのです。